星のブランコ

 雲一つない晴天に誘われて、夫と近くのハイキングコースに出かけた。
 家の近くには、いろいろなハイキングコースがあるのだが、以前から、星のブランコ周辺の山の紅葉が気になっていたので、紅葉はもう終わっているだろうが、一度行ってみようということになった。
 今日は、磐船神社から168号線沿いを歩いて星田園地へ。
 ハイキングコースを登って星のブランコへ行く。
 実は、私はこの吊橋が苦手だ。最初に来た時渡ったのだが、途中で足がすくんで、やっとのことで渡った経験から、もう絶対にこの吊橋は渡らないと決めていた。
 200メートル程の長さの吊橋で、中央は50mの高さだ。出来た時は世界一とのふれこみだったが最近は言わないところをみると、どこかに越されたのかも知れない。
 しっかりとした作りで、長さはあるが簡単に渡れそうな気がするが、真ん中あたりは揺れるので、足がすくんでしまう。しかし、まだまだ先があるのだ。
 こんな吊橋、絶対渡らない、とその時心に決めていた。
 
 次に行った時は、娘や息子の家族は楽しそうに渡って行ったが、私だけ引き返した。大ちゃんやさっちゃんなど孫たちは、この吊橋を走って渡っているのを見て、私はみじめな気持で引き返したものだった。
 
 今日はその時の気持ちが薄れていたからか、目をつむってゆっくり渡ればいいのではないか、という気持ちになっていた。
 目をつむって、左手で横の綱を持って、右手で夫の服の裾をしっかり掴んで、一歩一歩そろりそろりと渡り始めた。
「もう、真ん中?」
と聞いても、
「まだまだ」
と夫が言う。
 うっすら目を開けると、谷底の深い緑がかすかに見え、ゾゾッとふるえがくる。

 前から人が来て、橋が揺れる。後ろから来た人が、笑いながら追い越していく。子供が走って通り過ぎる。
 200メートルが何と長かったことか。

 やっぱりこの吊橋は渡れないと再確認した。これからは絶対に橋の手前で引き返すことにする。

 展望台から磐船神社までは転げ落ちそうな急坂だったが舗装されて良い道だった。今度は、この道を展望台まで歩こうと思う。