越中八尾おわら風の盆 前夜祭

 富山駅の改札口に向かうと、そこにキヨさんのにこにこ顔が待っていた。
2014年に新幹線が通るので、今富山駅は工事中で、仮駅舎になっている。
 すぐに墓参りに向かう。花も水も線香もろうそくも、彼女が用意してくれている。花を生け墓に水をかける。お墓に手を合わせ、日ごろの御無沙汰を詫びる。

 それから八尾に向かう。
途中、県立植物園に寄り、珍しいオニバスを見た。大きな縁ありのお皿のような、本当に珍しいハスだ。こんなハスの葉は見たことが無い。
 午後5時、閉園と同時に植物園を出た。八尾は8時から踊りが始まるのでゆっくりと八尾を目指す。

 八尾が全国に誇る民謡「越中おわら」は300年の歴史を持ち、情緒豊かで気品高く、綿綿としてつきぬ哀調の中に優雅さを失わぬ詩的な唄と踊りです。二百十日の厄日に豊穣を祈って三日間行われるお祭りである。
 おわら風の盆は「東新町、西新町、諏訪町、上新町、鏡町、東町、西町、今町、下新町、天満町、福島」の11の町で、それぞれ趣向を凝らして行われる。
 その前夜祭が8月20〜30日に各町に分けて行われている。

 キヨさんは私をその前夜祭に連れて行ってくれるのだ。今日は上新町の日だ。11の町の中で1番道幅が広く、商店が多く建ち並んでいる町だ。通りが広いので、比較的容易に町流しを楽しむことが出来る。
 しかし最近、風の盆当日は観光客が多く、大変混雑するので、この前夜祭にツアーを組むバス会社も多くなったそうだ。前夜祭の方がゆっくりとよく見えるとの触れ込みで、今日も駐車場には沢山の観光バスが来ていた。
 案の定、踊りが始まる頃には、大変な観光客が押し掛け、私は椅子の上に立ちあがって見たが、頭がかすかに見えただけだった。
 
 八尾を後にしてホテルに向かう。途中、キヨさんは町中に出来た温泉に誘ってくれた。立派な温泉である。天然に湧き出た温泉だそうだ。お湯は黒っぽい色をしてぬるっとしており、いかにも体に良さそうだ。
 疲れを洗い流して、ホテルに向かう。
 夜の11時を過ぎてから、私達二人は風呂上がりの恰好でホテルにチェックインした。