「稲むらの火」

 東海(静岡県御前崎一帯)、東南海(紀伊半島南東沖)、南海(四国沖)地震が近い将来におきるといわれている。
 東日本大震災で、想定を超える津波が発生し、この上なく悲惨な災害に見舞われ、今、日本中が、いや世界中が悲しみの中にいる。こういう悲劇を二度と繰り返したくない。
 私は、津波については全くの未経験で、今回の震災ではじめて、その怖さを目の当たりにした。

 
 子供の頃、私の家に「稲むらの火」という題名の、本だったか紙芝居だったかがあった。何度も何度も父に読んでもらったので、挿絵だけでなく 読んでいる父の顔までがはっきり思い出される。
 「稲むらの火」は、1854(安政元)年の 安政南海地震津波の際、地元の濱口梧陵という人が、稲に火を付けて逃げ道を示し、村人を救った物語だ。
津波がくるぞー。津波がくるぞー」と、火を振りかざして叫んでいる場面は、今もまぶたの裏に焼きついている。
 津波については全然分からなかったが、「津波って、怖いものなんだ」と 思いながら暮らしてきた。
 もう何年か前だが、娘が和歌山に嫁ぎ、私の拙い運転で国道42号線を走行中、道路脇に「稲むらの火 記念碑」が立っているのを見つけ、あの話は和歌山での実話だったと知った。

 図らずも今日、その「稲むらの火の館館長」の熊野享さんの記事を新聞紙上で見つけた。
 津波対策、見直しの取り組みについて一文を寄せておられる。
 
 「稲むらの火の館」は 稲に火を付けて逃げ道を示し 人を救った実話の物語の教訓を 生かし続けるため、館が作られ、地震津波について学ぶ場になっているそうだ。
 その館に、3月半ば過ぎから、家族連れが沢山来るようになり、いろいろな資料を熱心に見ているそうだ。

 私も、悲惨な災害が起こらないことを祈りながらも、もし起こった時の備えを しっかりしておかなければならないと思った。