電話

 朝8時30分、電話がなる。
「もし、もーし、せっちゃーん、元気ィー。明日、待ってるよー」
富山のキヨさんだ。私は明日、田舎へ墓参りに帰る。その旨を郵便で知らせた。
「仕事、休み取ったから、車で駅に迎えに行くね。それから墓参りに行こう。花も線香も用意しとくから、持ってこんでもいいよ」
どこまで親切なんだろう。
 実は、お盆前に、キヨさんはうちの墓を掃除してくれたのだ。いつも私はその好意に甘えてばかりいる。
 そして、
「墓参りが済んだら、八尾に行って、’おわら’の予行を見ようよ。帰りに温泉に寄って汗流して帰ろう。予約しとくから」
本当に、どこまで親切なんだ。いくら断っても、自分の思う通りにするので、私はいつも言われた通りに付いて行く。

 キヨさんは小学校時代の幼馴染、家が近かったのでよく一緒に遊んだ。書道教室にも一緒に通った。彼女は、それからずっと書道を続け、今では書道展で立派な賞をとる。弟子は取らない。登山、写真など趣味も多く、それらにかかる費用のために、アルバイトに駆けずりまわっている見上げた人なのだ。

「明日、楽しみに待ってるからねー」
元気な声でそう言って、電話は切れた。