ペット③ 猫

 私は子供の頃から猫が割合好きだった。私が道端で拾って連れ帰って、家で飼い始めた猫は3匹位だろうか。
 ところが、夫は猫嫌いだった。猫の姿を見かけると、石を持って追いかけていた。だから、我が家では猫を飼ったことがない。
 しかし、3匹目の犬が死んでから、なぜか猫が我が家の庭にたびたび来るようになった。夫は人が変わったように、その猫におかずの残りをやるようになった。
 メス猫を争う激しい戦い、血みどろになった負け雄、子猫を連れて遊びに来る雄猫と雌猫、子猫を探し回る雌猫の悲痛な鳴き声などなど、猫の世界を我が庭で日々観察するうちに、愛する猫軍団は10数匹に膨れ上がっていた。私がドアを開けると、その数匹が窓の外に勢ぞろいしている。その並び方は私が憎からず思っている順番であることに気づいてびっくりした。
 私のお気に入りの「トラ」と名付けた雄猫は体中トラ模様のハンサム君。1番前にツンと澄まして座り、私の一挙手一頭側を見守っている。可愛いと思い抱こうとすると、牙を剥いて遠くに退く。やっぱり野良猫なのだった。