小川洋子氏の 「海」 を読む

 小川洋子は「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞、「妊娠カレンダー」で芥川賞、「博士の愛した数式」で読売文学賞本屋大賞、「ブラフマンの埋葬」で泉鏡花文学賞、「ミーナの行進」で谷崎潤一郎賞とたくさんの賞をとり、その他著書もたくさんある作家です。
 私は名前はよく知っていましたが、今までに読む機会が無かったのですが、今日書店でこの本が目にとまり読むチャンスに恵まれました。
 内容は、婚約者の泉さんの実家に結婚の承諾を得るために訪れた僕は彼女の家族に丁重に迎えられる。


家の中は準備万端すべてが整っていた。隅々まで掃除が行き届き、そこかしこに花が飾られ、廊下に並んだスリッパは
  おろしたての新品だった。どこに目をやっても隙がなかった。どんな種類であれ、客を迎えるのに慣れていない家のよう
  な気がした。

   すぐに夕食となった。テーブルには糊のきいたまっ白いクロスが掛けられ、あふれんばかりに料理が並んでいた。ただ
  単に豪華というだけでなく、飾り付けや色合いや食器との組み合わせ方や、あらゆる面において神経が行き届いていた。
  お母さんはせわしなく台所と食堂を行き来し、お父さんは「さあどんどん食べなさい」と繰り返してばかりいた。

   僕は小さな弟が海辺に立っている姿を思い浮かべてみた。両足はたくましく砂を踏みしめ、掌は優しく浮袋を包んでい
  る。まるで風は目印を見つけたかのように、彼に吸い寄せられる。海を渡るすべての風が、小さな弟の掌の温もりを求め
  ている。
   彼の唇は本当に今そこに鳴麟琴があるのと変わりなく、暗闇を揺らし続けた。それは僕の愛する泉さんの唇とそっくり
  同じ形をしていた。

婚約者「僕」を迎える泉さんの家族、お父さんお母さん特におばあさんの描写が丁寧で詳しい。でも、弟の行動が私には読みとれない。だから、題名である「海」との関連が分からない。